ちょっと色々考えさせられた事があった。
仕事中、車で道路の路肩に停めて待機してた時のお話。
※珍しくマジメな話でオチもない為
いつもみたいなバカ話を期待してくれてる方には申し訳ないです;;
車の中で、連絡まだかと待っていた時に、車の左側を通り過ぎようとしていた
中年男性がふと足を止めた。
随分みすぼらしい格好で、髭も生やし放題だったのを一目見て
浮浪者だなと推測出来る。
彼は丁度助手席の窓の横で足を止め、空いていた窓ごしに話しかけてきた。
『あのぅ…』
明らかに彼の向いている方向がこちら側なので、何でしょうと答えた。
『食べ物か飲み物、余ってましたら何か譲っていただけないでしょうか?』
物乞いだ。
物乞いなんてされたのは初めてだった俺は少々戸惑いつつも
何かあったっけなぁと、ザっと車の中を漁って見ると、
缶ジュースが一本、ダッシュボードから顔を出した。
[アセロラなんちゃらドリンク]
普段お茶かブラックコーヒーしか飲まない俺にはまずクチに合わないだろうと
客からもらったまんま1ヶ月近く放置気味だったモノだ。
『こんなモノしかないけど…』
念のため、賞味期限(切れてるのを気付かずにプレゼントしてくれる客が少なくない)
を確認した後、そのまま窓越しに手渡した。
彼は渡された缶をくるりと手で一回りさせ、どんなモノなのか見直した後
『いいんですか?』
と、少し申し訳なさそうな口調。
どうぞどうぞと少し笑顔を見せた俺に対して続けて彼は
『ありがとうございます。お仕事中忙しい中すいませんでした。』
と、深々と頭を下げて、そのまま歩いて行った。
それから間も無く連絡があり、再び車を走らせた。
少し進むと、先程の彼が歩いているのが見えた。
進行方向が同じだったため、追いついてしまったらしい。
そこには先程俺が渡したアセロラなんちゃらドリンクを
さぞかし美味そうに、顔を真上に向けて一気飲みしていた。
それを通りすがりに見た俺は、何ともフクザツな気持ちを覚えた…
ここからは俺の推測混じりの話だが、おそらく彼は
自ら望んであの生活を送って居るのだろう。
パっと見た感じは、年齢もせいぜい俺の倍程度かと。
年齢が進むに従って、働くのは随分門が狭くなった現代の日本だが、
生活する為に何でもする気になれば何でも出来るのが人間だと思う。
彼はそれをせずに今の生活を送っているのではないか。
現代人として生きる為に必要なありとあらゆるモノを代償に
働く事への完全な拒絶に成功したのだろうと。
プライドも例に漏れず、完全に捨て去る事が出来なければ
人生経験半分程度の俺に対して、下手な敬語で物乞いなど出来ないだろう。
(ちなみにこの時俺はタメ語で受け答えしたと追記。)
俺にとって要らないモノを受け取り
深々と頭を下げ、美味そうに飲み干す彼を見て色々考えさせられた。
…仕事頑張ろうと思った。
少し違った視点で今の生活を見直した一日。